元ハンセン病患者の自尊心と優しさ「あん」
改めて考えたことを記す。
ハンセン病患者だった徳江(樹木希林)は、それが原因でどら焼き屋をやめることになる。
元ハンセン病患者が働いているという噂が流れ、どら焼き屋にお客が全く来なくなったからだ。
しかし徳江はそのことについて、店長の千太郎(永瀬正敏)に謝らなかった。
ただ、店長が「自分を辞めさせるという判断をしたことについて悩んだ」ということには気遣いを示した。
ここに大きな違いがある。
徳江は元ハンセン病患者であったが「それでも自分の人生には意味がある」と考えていた。
おそらく、どら焼き屋の売上が無くなっても、それは「病気に対しての他の人の間違った見方が問題だ」と考えたのだろう。
そうなると自分に謝る理由はない。それは当然である。
ただ店長が「自分が原因で苦しみ悩んでいる」と考え、徳江は「一人の人間として」優しい同情心を示す。
徳江は以前の病気について何ら引け目があることを表すことはなかった。人間としての自尊心を保っていたからだ。
そして「優しい同情心」があり、そのことに基いて人に暖かく接することができたのだ。
これはうつ状態である自分にも必要な特質だ。