鮭・乱高下・大型倒産
みなさんは鮭相場と言うものの存在をご存知だろうか。
わたしは昨日初めて知った。
こういう速報もあるのね。それはさておき……
当社は、1998年(平成10年)8月に設立された水産品輸入卸業者。……近年は80億円前後の年売上高で推移し、2015年1月期には鮭相場の上昇などにより年売上高約132億8500万円を計上していた。しかし……2013年1月期には鮭相場の暴落で大幅な欠損計上を余儀なくされ、以降は債務超過が続くなど経営が大きく悪化。……当社は11月30日開催の株主総会決議により解散していた。
なぜ、鮭相場は暴落したのだろうか。事の発端は東日本大震災である。
日本の鮭のほとんどは宮城県で養殖されたものである。であるから津波被害によって鮭不足は必至と思われた。
ここで水産会社は、海外へ活路を見出そうとした。目をつけたのがチリ養殖鮭である。
ところがここで最初の誤算が発生する。津波被害は少なかったのである。
当然のごとく供給過剰になり、鮭相場は降下し始める。
しかし円安になり、輸入養殖鮭の値段は上がり始めた。そこにロシアによるウクライナ侵攻が起こる。
この侵攻によりロシアに経済制裁が課された。経済制裁により、ロシアはデンマークやノルウェーから鮭を輸入できなくなった。日本の水産会社は、ここでロシアが鮭輸入先をチリに向けると考えた。そういう噂が流れたためだ。しかしこれも誤算であった。
それでロシアに負けまいと先手を打ち、高値でチリの養殖鮭を買い始めた。
ところが、経済制裁によりルーブルの価値が下がり、ロシアの購買意欲は低調なものとなった。
つまり思ったよりロシアは、チリ養殖鮭に飛びつかなかったのだ。
日本の水産業者はチリ養殖鮭を高値で買ってしまっていたため、それを安く卸すことができなかった。つまり高い卸値で販売した。
これが、日本のスーパーなどの購買意欲を削いだため、日本が高値で買ったチリ養殖鮭は余剰になり始めた。
一部の水産業者は、腐らすよりはマシだと思ったのか、捨て値で卸し始めた。
これにより、日本の鮭相場は暴落した。
一方で頭を抱えるのは、ほんの少し前まで800円台で購入していた水産商社の担当者たち。「含み損を抱えた在庫を処分すると損失が確定するため、売るに売れない業者が多くいる」(水産商社の幹部)。前述の大手荷受けの担当者は、「せっかく安くなっているので、皆さんにどんどん食べてほしい」とため息をつく。スーパーと水産商社が卸価格をめぐってせめぎ合う中、激しい相場変動はしばらく続きそうだ。
なんとも、皮肉なセリフである。