「在外邦人等の保護措置」はとられるか? 南スーダン

陸上自衛隊の部隊が国連のPKO=平和維持活動に参加しているアフリカの南スーダンで銃撃戦が続いていることを受け、現地の日本人の国外退避に備えるため、11日夕方に自衛隊に派遣命令が出され、愛知県小牧市航空自衛隊の基地から輸送機が出発しました。

出動早いな。これまでに何度か命令が出ているのに加え、向かう先が自衛隊がすでに展開しているジブチというのも大きいだろう。

今回はもしかしたら、平和安全法制で新設された「在外邦人等の保護措置」も必要とされるかもしれない。

ただ、その要件がちょっと怪しい。

自衛隊

第八十四条の三  防衛大臣は、外務大臣から外国における緊急事態に際して生命又は身体に危害が加えられるおそれがある邦人の警護、救出その他の当該邦人の生命又は身体の保護のための措置(輸送を含む。以下「保護措置」という。)を行うことの依頼があつた場合において、外務大臣と協議し、次の各号のいずれにも該当すると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、部隊等に当該保護措置を行わせることができる。
 一  当該外国の領域の当該保護措置を行う場所において、当該外国の権限ある当局が現に公共の安全と秩序の維持に当たつており、かつ、戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。第九十五条の二第一項において同じ。)が行われることがないと認められること。

つまり戦争行為が行われている場所にはいけないというわけだね。さらに向かう先では、その国の当局によって治安維持がなされていることも前提条件。

前々から言われてたけれども、そもそも非戦闘地域であれば自衛隊はいらないわけで。まぁ、戦闘行為ではなくてゲリラ活動には対処できそうだ。

気になるのが「自衛隊の権限(武器使用)」でかなり踏み込んでいる点があること。

(在外邦人等の保護措置の際の権限)
第九十四条の五  第八十四条の三第一項の規定により外国の領域において保護措置を行う職務に従事する自衛官は、同項第一号及び第二号のいずれにも該当する場合であつて、その職務を行うに際し、自己若しくは当該保護措置の対象である邦人若しくはその他の保護対象者の生命若しくは身体の防護又はその職務を妨害する行為の排除のためやむを得ない必要があると認める相当の理由があるときは、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし、刑法第三十六条 又は第三十七条 に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。

「その職務を妨害する行為の排除のためやむを得ない必要があると認める相当の理由があるときは、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。」というのは、いわゆる「任務遂行型」の武器使用のことである。

これまで自衛隊の権限(武器の使用)は、武力行使との兼ね合いから、いわゆる「正当防衛型」に限られてきた。人間が本来持つ正当防衛の権利は自衛隊の隊員にも認められるべきというものである。これは分かる。

それ以外は「武力行使」に近づいちゃうのでやめましょうね。というのがこれまでの武器使用のスタンスであった。でもこれだと邦人が誘拐されたり、近くで活動中の他国部隊が襲撃されているときに助けに行く(いわゆる「駆け付け警護」)事はできない。

そこで先の平和安全法制の中で「邦人保護措置」「駆け付け警護」が認められることになった。

駆け付け警護についての権限(武器の使用)。

国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律

(武器の使用)
第二十五条  前条第一項の規定により小型武器の貸与を受け、派遣先国において国際平和協力業務に従事する隊員は、自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体を防護するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、当該小型武器を使用することができる。

(中略)

7  第九条第五項の規定により派遣先国において国際平和協力業務に従事する自衛官は、その宿営する宿営地(宿営のために使用する区域であって、囲障が設置されることにより他と区別されるものをいう。以下この項において同じ。)であって当該国際平和協力業務に係る国際連合平和維持活動、国際連携平和安全活動又は人道的な国際救援活動に従事する外国の軍隊の部隊の要員が共に宿営するものに対する攻撃があったときは、当該宿営地に所在する者の生命又は身体を防護するための措置をとる当該要員と共同して、第三項の規定による武器の使用をすることができる。この場合において、同項から第五項までの規定の適用については、第三項中「現場に所在する他の自衛隊員、隊員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」とあるのは「その宿営する宿営地(第七項に規定する宿営地をいう。次項及び第五項において同じ。)に所在する者」と、「その事態」とあるのは「第七項に規定する外国の軍隊の部隊の要員による措置の状況をも踏まえ、その事態」と、第四項及び第五項中「現場」とあるのは「宿営地」とする。

 わかりにくいわ。