アニメ音響監督の仕事

きまぐれオレンジ☆ロード「あの日にかえりたい」でBGMに興味を持ったが、クレジットに出てくる「音響監督」が決めるんだろうか?

そこで調べてみたらこんな記事があった。

音響監督さんのお仕事Q&A 〜長崎行男さんに聞く〜

長崎:音響監督って、日本独自の職種なんですよ。アメリカだと、サウンドスーパーバイザーという効果寄りの人と、ミュージックスーパーバイザーっていう音楽寄りの人と、セリフのディレクションをする監督と、大きく3つに分かれる作業を音響監督が一人で担ってやってるんです。

作曲家に「こういう音楽を作ってください」ってメニューを出して、声優さんによるセリフの収録をやって、効果音の指示出しをやって、各話の選曲作業まで、音周りを統括してやっています。

日本オリジナルなんだ。で、音響「監督」というわけだから、音声については「本監督」と同等なのかと思ったらそうではないらしい。

長崎:さっきの「監督より偉い、偉くない」の話だけど、もともと実写のスタッフって監督のために集まるんですよ。監督が何をしたいかによって、カメラマン、録音技師さん、美術さん…と選んでいく。アニメの場合も全く同じですね。キャラクターデザイン、音響、美術…みんな監督が何をやりたいかを実現するために集まったスタッフだから、監督よりえらい人は1人もいないですね。

なるほど。監督の意を受けて音声を作る役目というわけですか。

とは言え声優等に対して演技指導などすることもあるようだ。しかしそれはかなり特殊な場合だそうだ。

長崎:そこが大きな間違いなんですよ…うん、今はそうなっちゃってるのは事実なんですけど、ほんとはアフレコの現場で演技指導なんて出来ないんですよ。そんな時間はないです。ただ、最近はタレントやアイドル歌手の方が主役に抜擢されることがありますよね。そういうときはそのタレントさんたちも分からないことだらけで戸惑ってるでしょうから、出来る限りの指導はします。

右も左も分からない「素人」には指導するが、プロ声優にはしない。時間がないから。考えたらこれは実写とアニメの最大の違いかもしれない。

通常、実車の場合は撮影と同時に録音もおこなう。絵と音が同時に進行するわけだ。音楽や効果音はあとになるかもしれないが。しかしアニメはスケジュールが押していると絵がない場合もある。

時間がないので演出はしないという音響監督。では演技はそれほど重視されないのだろうか?

長崎:人間の認識能力って視覚と聴覚+αで100%って言われてて、アニメの場合は聴覚が7割で視覚3割、実写の場合はその逆ですね。だからアニメの場合はすごく上手くないと下手くそってバレるんですよ。

アニメは実写ではできない激しい戦闘シーンだったり、壮絶なシーンがあったりするからこそ、実写でやること以上のものができないといけないのにね。ただ「ぎゃー!」と叫ぶだけじゃなくて、その「ぎゃー!」の中に痛さとか怖さとか劣等感とか、色んなものを混ぜなければいけない。それが混ぜられるかどうか…。

 やはり声優の演技力がモノを言うようだ。さて続いて音楽について。

長崎:さっきの音響監督の仕事の「音楽指示」ってところでいうと、映画の場合はもうきっちりと最後までコンテができてるから、それに沿って「ここからここまで、こういう音楽で」っていう音楽メニューを作ります。それを音楽ライン決めって言ってます。で、それを作曲家に渡すんです。

 作曲家についてはこんな注文が。

長崎:やはり作品世界を深く理解して、世界観を構築するような音楽を作ってくれる人がいいですね。そして、感情を揺さぶったり、心に染み込んだりするような曲を書いてくれる人。

アニメの場合は実写の音楽よりも情報量が欲しいので、聴いているだけで映像が見えてくるような、イメージ喚起力も必要ですね。いわゆる演技力があって、エンターテイナー的な資質も持ち合わせている人がいいなあ。

 では具体的にどのように作曲家と意思疎通をおこなっているのか? 長崎さんの場合こんな方法を取るそうだ。

長崎:音楽メニューの書き方は人によって違うんですけど、僕がやった「ガッチャマンクラウズ」ってのはこういう音楽メニューでした。僕の場合は大体どんなシーンかってのを書いて、それと合わせて絵コンテのこのシーンですっていう対応表を書くんです。それで作曲家はタイトルと中身で想像して、実際にコンテを見て曲を書くんです。

これだと作曲家は、イメージしやすいだろう。

音響監督、奥が深い。