「Aちゃんと親しくなる」作戦失敗

昔から気になっていた「遠い親戚のような関係の異性(血はつながってない)」がいたんですけど、まぁそういう人って遠くに住んでいるわけで、年に一度会えればいいかなぁぐらいの感じだったんですよ。

だけど「まだ(相手は)若いし、真面目に付き合うとかは考えられないなぁ」というぐらいの意識。そんな曖昧な存在であった。

で、一応は「また会えたらこんなふうに会話したいなぁ」とか考えていたんですね。

結婚はしてたしね(今は離婚してます)。それぐらいの余裕はありますよ。はっきり言えば若い頃のがっつき感はない。精神的な病気もあるし。

で、最近、親戚が関係する催し(発表会?)みたいのがありまして、そうは言っても2千人ぐらいの人出がある集まりなので(べつに全員が親戚ではない)会える確率は限りなくゼロに近いわけです。

でも会いたいので、その催しの会場内をあてもなくあっちへふらふら、こっちへふらふらしてたんですが見つけられず催し終了。

そりゃ見つけられないよね数千人だもの。

各自解散ということで、出口付近で知り合いと談笑してたんですね。「ちきしょう今年の夏はこれで終わりかよ」とか考えながら。

そんな時に突然、別の方角にいた知人がわたしに対し「この人わかる? Aちゃんだよ」とか言って、ある女性を紹介した。

偶然のなせる業か、神の憐れみか、悪魔の罠か。

Aちゃん? まぁわたしが探していた子ですけど。誰この美人。

Aちゃん? いや、わたしが知ってるAちゃんはもっと小柄で可愛い感じだったはず?

ええぇ? なんでこんなに美人になってるの? すごい進化してる。

ここでもうかなり動揺している。

予定では「わたしがAちゃんを発見」→「やぁAちゃん(余裕)」となるはずだったのが、いきなりAちゃん登場である。

もう会えないだろうというタイミングであり不意打ちである。サーチアンドデストロイどころか待ち伏せ攻撃である。

コックピットスタンバイのつもりがホットになった。

相変わらず小柄ではあるんだけど、身長もいくらか伸びていて一瞬全く気づかなかった。ちょっと前からわたしのそばにいたみたいだけどわからなかった。

顔をまじまじと見れば、たしかに昔の面影がある。化粧はしていないようだが(今思い返せば、この時点で動揺がはげしくなり、化粧どうこうよく思い出せない。美人ハレーションはかくもすごい)、元がいいから綺麗である。

とにかく思い直して「Aちゃんと親しくなろう」作戦発動である。

そうは思ってもちょっと待って、心の準備というやつが。

まずは君が落ち着けというわけで、大人の余裕で「最近どう? 悩みなんかあるなら聞くよ」みたいな話をしだしたんですよ。

だけどね、心の準備がね。

相手は、こっちのことを親戚として知っているので警戒もせずに話をしてくれている。しかもパーソナル・スペースが狭いらしく顔が近い。

近づいた相手の顔を改めて見ると、超好み。ドストライク。

冷静に相手の話を聞いているふりをしていたが、本当はかなり焦っていた。

この文章を打っているだけでまた緊張してきた。

話を聞いてみると非常に真面目で、家族思い。性格もいい(これまでは挨拶程度しかしてなかった)。

(このまま終わらせてはいけない)という謎の使命感のもと、自分が持っていた(この時のための)メモ帳を取り出し「何か相談事があったらここにメールしてね」ということができた。

相手に渡したのは、わたしの携帯番号。ここまではシミュレーション通りである。これは相手に余計な心理的負担をかけさせまいとする妙案(だと思っていた)であった。

話も終わり、別れることになった。

だが、Aちゃんが別れ際に「何かあったらメールします」と言ってきた時点で、鈍いわたしにしてはめずらしく瞬時に作戦失敗に気づいた。

「何か」がなかったら、メールしてこないじゃん…… そしてそれを名目に、こっちのことを無視することもできるじゃん。

とっさに「何かなくてもメールしてくれれば嬉しいな」と言ったものの後の祭り。

Aちゃんに対する、いきなり湧き上がったわたしの好意も伝えられなかった。

いろいろ考えてたのに、実際に女性の前に立つとこれだよ。全く自分にがっかりだよ。

後日ネットで調べてみると「気になる相手がいたら、連絡先は男らしく(これも死語だろうよ)ストレートに聞くべき」という意見が、ほとんどであった。

そうだよね。こっちが動かなければ話が進まないこともあるよね。

一期一会…… 大阪さんも叫んでたよね。

当然のごとく、メールは来ない。

なんでメモ帳とペンまで用意していたのに相手の連絡先を聞かなかったのよ、過去の自分!

台風も過ぎ去り、今年の夏も終わろうとしている。