PCオーディオがいまいちパッとしない理由

パソコンと音楽ファイル。これは親和性が非常に高い。

大型モニタで多数のファイルを管理でき、タグもつけられる。パソコンがもともとデジタルな環境であるため、ハイレゾなどのいわゆる高音質音楽ファイルの出力はお手の物である。

なのにいまいち盛り上がっていない。これには大きく分けて3つ理由がある。

1つはWindowsがいまだUSBオーディオ2.0に対応していないこと。

もっともUSBオーディオ1.0においてもハイレゾの出力は可能であるが、ユーザーがUSB-DACなどのUSBオーディオ2.0の機器を使おうと思っても、すぐには無理なのである。Windowsが対応していないので、USB-DACを売っているメーカーが「Windows用のドライバ」を提供していないと使えないのだ。

つまり世の中に出回っているUSBオーディオ2.0規格の製品を使いこなすことが難しい状況であるのだ。

このような状態だと音響メーカーも、プロ向けはともかく一般ユーザー向けの低価格のUSB接続音響機器を出したくないだろう。

2つはパソコンと従来オーディを機器との接続が貧弱になりがちであること。

現在、オーディオ機器ではそれぞれの接続は「デジタル」でできるようになっている。ただそれはパソコン側にのみ詳しい人からすると耳慣れないものである。光同軸ケーブルなどはその筆頭だろう。

これを使おうと思うならアンプを買わなければいけない。

3つめはパソコンオーディオ機器構成の決定版といえるものがないというもの。

パソコンオーディオを極めようと思っても、「まずは入門的なこういうもの」という事例がない。

これは最もなこととも言える。なにせパソコンとスピーカーを繋ぐ方法は数多くあるのだ。一番簡単なのはアクティブスピーカーとパソコンをピンジャックで接続するというもの。だがそれ以上の品質を求めようと思うと俄然選択肢が増える。

オーディオ界隈ではスピーカーはもっぱら「パッシブ」が主流だ。となると確実にアンプが必要になる。

この場合の接続方法は、パソコン→アンプ→スピーカーなどとなろう。

このアンプというのがピンきりでどこから手を付けてよいか初心者には全くわからない。お手上げである。

パソコンを長年使っている人ならわかると思うが、パソコン周辺機器というのは安ければ安いほど品質が悪い。だがアンプではそうではない。高価であれば高音質かといえばそうではないし、安いからダメということもない。

そもそも、パソコンと接続するアンプというもののジャンルが確立していない。これは前述したUSBオーディオ2.0未対応問題と無関係ではあるまい。

音響メーカーとしては、高品質をうたった「パソコン用アンプ」というものを出したいに決まっている。ハイレゾ音楽データのネット販売が盛り上がっているからだ。明らかに「パソコンで高音質音楽を楽しむユーザー」の数は今後増えていく。

しかし、パソコンとアンプを繋ぐ最も簡単で高音質を保てる接続法は「USB」であるが旧式な規格であることがネックになる。古い規格のものを「新製品」として売るのはあまりにも無謀だ。つまり「売り」がないのだ。実際拡張性もない。

USBオーディオ1.0の規格上、転送できるデータ量に上限がはっきりと決まっているため曖昧な「高品質」という言葉は使いにくい。また「次世代」などという未来感あふれるキャッチコピーも無理だろう。