海兵隊機墜落事故、救難飛行艇US-2で救助される
もし、パイロットが助かるとしたらこの救難飛行艇のおかげである。
救難飛行艇のなにがすごいのか。
まず通常の救難ミッションの流れを見てみよう。航空自衛隊を例にあげる。
戦闘機等が墜落しパイロットが緊急脱出。航空救難団はただちに救難隊のU-125A捜索(ジェット)機を発進させ高速で脱出予想地点へ向かう。
U-125A捜索機はその速力を活かし、要救助者が所持する無線機等による信号を目標にして、比較的短期間に目標を発見できる。
U-125Aは要救助者を確認した後、目標付近にマリンマーカー及び発煙筒などを投下し要救助者を見失わないようにしつつ、監視を続ける。
問題はここからである。
U-125Aとコンビを組むのがUH-60J(ヘリコプター)救難機であるが、U-125Aと同時に発信したとしても、その速力差ゆえに目標に到着するのがかなり遅れる。
気象状況が悪いときなどは致命的である。風向きが悪いほど燃料を消費し航続距離が短くなる。そうなれば目標上空での救難活動の時間も短くなり、ホバリングできる余裕が少なくなってしまう。
さてこれが救難飛行艇であればどうだろうか?
ターボプロップは低燃費かつ高速化が可能な航空機用エンジンであり、それゆえに滞空時間と航続距離をヘリコプターよりもかなり長くすることが可能である。
実際、US-2は片道2000キロも進出でき、そこで2時間捜索が可能である。
そして決定的な利点として、要救助者を発見したなら(気象条件が許せば)ただちに着水し、救助活動を開始できるのだ。
U-125Aと大きく違うのがここだ。残念ながらU-125Aは要救助者を発見しても救助はできない。いくら早く発見できても救助は後に続くヘリコプターに委ねるしかないのだ。
そして意外と知られていない任務として「離島の急患搬送」がある。
日本は島嶼が多く、本土から離れたところに存在する島もある。
そういった場所は自然公園に指定されていたりしてむやみに空港など広大な土地を必要な施設を作れなかったりする。
こうなってくると、その僻地にある離島で急患が発生した場合どうするしかないのか自明である。
そして救難飛行艇を島の付近に着水させ、島から船で乗り込むのだ。島によってはそのための港湾地区が整備されていたりして、最初から救急車がそこに向かって行く場合もある。
これはもう恒常的に行われていて、イメージとしては救急車並みの扱いになっている。
小笠原諸島方面だと厚木基地から発進になる。
もっと南になると硫黄島基地から救難ヘリがでて北上し急患の発生した島に向かい、そこで急病人をピックアップしてまた硫黄島基地に向かう。そしてそこから折り返して本土に向かうという方法もある。しかしダイレクトに救助できる飛行艇のほうが時間短縮になる。
法的に言って自衛隊のこういう使い方に問題はあろうかと思うが、やむを得ない措置なのである。
ちなみに沖縄諸島の急患には陸上自衛隊が救難担当ヘリを用意していて、長距離航行が可能なように特別に改造されているものが装備されている。
航空自衛隊ではなく陸上自衛隊が主に担当しているところが興味深い。沖縄諸島は密接しているため固定翼機よりヘリのほうが急患輸送に適しているのだろう。
ヘリコプターの装備数に余裕がある陸上自衛隊が担当するようになったのかもしれない。