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ジラード事件から30年、射殺についての誤解

ジラード事件(ジラードじけん)は、1957年(昭和32年)1月30日、群馬県群馬郡相馬村(現・榛東村)で在日米軍兵士・ウィリアム・S・ジラードが日本人主婦を射殺した事件である。

ジラード事件 - Wikipedia

この事件については、なんとなく覚えていて(このとき生きていたという意味ではなくて、事件を知っているという意味)「米兵がライフルで主婦を撃って死亡させた」というぐらいしか認識していなかった。

端的に表現すればある意味間違いではないのだが、詳細に調べてみると興味深いことが分かった。

上記の記事からライフルの使用状況を見てみよう。

薬莢を拾う事を目的に演習地内へ立ち入った日本人主婦……に対して、主婦の背後から……ジラード三等特技兵……がM1ライフル装着グレネードランチャーで空薬莢を発射し、主婦が即死する事件が発生した。

 「M1に装着されたグレネードランチャーで空薬莢を発射」とはいったい、どういうことなのだろうか?

これを知るためにはM1に装着されている「M7グレネードランチャー」について知らなくてはいけない。

M7グレネードランチャー……は、M1ガーランド小銃用に開発された22mm ソケット型小銃擲弾発射器である。第二次世界大戦朝鮮戦争で広く使われた。制式名称はRifle Grenade Launcher, M7(M7小銃擲弾発射器)。

M7グレネードランチャー - Wikipedia

この記事で写真があるのだが少しわかりにくいので別の写真を用意した。

右下にあるのがランチャーというか「アダプタ」である。

このアダプタをM1の銃口に装着し下図のように擲弾をはめ込むのが通常の使用法である。

そしてM1の薬室に「空砲(.30-06スプリングフィールド弾)」を装填し、その空砲を着発させることによって発生するガス圧で、擲弾を打ち出す。

この事件のとき、米軍兵士はこのアダプターがついた状態のM1を携帯しており、それに空砲を装填していた。

米軍兵士には「演習に使用していた機関銃及びその周辺にある装備の警備」という任務が与えられていたのであるが、当時米軍兵士が演習を行っていた演習地(相馬が原演習場)においては、演習に使用された弾薬の空薬莢目当てに民間人が侵入することが日常的にみられていた。空薬莢を集めてそれを金属加工業者等に売ればお金になるのだ。

米軍は、これらの民間人に警告を与え退去させる目的で、グレネードランチャーアダプタを付けたM1のアダプタ内に「(.30-06スプリングフィールド弾)空薬莢」を詰めて、M1の薬室に「空砲(.30-06スプリングフィールド弾)」を装填、発砲していた。このようにして放出される薬莢は大きな音を立てて飛翔するので警告になるようであった。

めんどくさいので、上記の状態を「A」と表現する。

このようなライフルの使用が公式に認められていたのかどうかまでは分からないが、少なくても事件の米軍兵士の周りではよく見られていた。

それにしても退去や警告が目的とはいえいきなり発砲はどうかと思うが、それはともかく事件に戻ろう。

事件当時、米軍兵士の動機は不明であるが「A」の状態のM1を用いて、二人の民間人に2回発砲した。

空薬莢は自動装填されるわけでないから、もう一度アダプタ内に空薬莢をアダプタ銃口から挿入して、再度発砲したことになる。

この2度目の発砲によって放出された空薬莢が女性の腹部に命中。女性は死亡した。

だからこの事件は「ライフルで女性を射殺」というのは、正しくて間違いということになる。