東映っぽい松竹映画と松竹っぽい東映映画
なんでこれ見たんだろうなぁ? どういう理由で見たかは覚えていない。加藤剛さんが好きなのか、それとも海保が好きだったのか。
それにしてもよくよく見てみると「海保の仕事は大切である」ということを前面に押し出してる映画だなこれ。
「協賛 海上保安庁」の映画だから当然だけれども。
映画前半は旧来の「灯台守」の仕事なんだけれど、後半になると「航路標識保全」業務になってくる。時代の趨勢から言って灯台の無人化は避けられないからこれも当たり前の表現だ。
ヘリコプタークラスタとしては中井貴一さん演じるパイロットと愛機のベル212にどうしても目が行ってしまう。しかもダサかっこいい旧塗装とスタイリッシュな新塗装どっちも出てくる。
国民の生命と財産にかかわる大切な仕事を「じっくりとしかも丁寧に」描くその映画は松竹っぽくない。どちらかといえば東映だ。
最後、圧巻の観閲式で大原麗子さんが、自分の息子が乗りこのまま遠洋訓練に向かう練習船こじまを見送りながら「戦争に行く船でなくてよかった」とつぶやく。ここら辺は映画人の良心らしき表現である。
しかし海保は「国境警備隊」の性格を持っていることは忘れてはならない。事実、高度に訓練を受けた国外武装勢力と銃撃戦を繰り広げたのはほかでもない海保である。
いっぽうこちらはファミリードラマともいうべきか。
コメディに近いか。
わたしは松田龍平さんの演技をこれまで全く見てこなかったが、しょっぱなから吹き出してしまった。
小学4年生の「雪男」に「大人の家族について作文を書く」という宿題が出された。雪男は「哲学者であるおじさん(松田)」について書くことにした。
しかし「おじさん」はダメ人間だった……
本来の「映画でキャラが立ちそうなダメ人間」ではない。
人に害を加えたりお金を奪ったりはしない。
そういう積極的なダメ人間ではなくて、家でゴロゴロして子供向けの漫画雑誌を万年床で読んで楽しんでいるような「消極的」ダメ人間である。雪男の妹にも馬鹿にされている。
松田さんの風貌は非常に切れ者に見えるのでそのギャップにやられてしまった。
おじさんは雪男にいろいろと説明(というか言い訳)をするのだが、そのたびに「いいかい雪男、おじさんは哲学者だから……」というセリフが出てくるのだが、あのシリアスな顔との落差でおかしさがこみあげてくる。
さて、その「おじさん」にどういうわけか見合い話が持ち上がるが……
というのが実に大雑把なあらすじ。
これどう考えても松竹の「あれ」でしょう。
マドンナで言うところ(あっ、言っちゃった)の人は「真木よう子」さん。この配役が唯一東映らしい。ちょっとお年を取られたかしら。
結末もそれっぽい。
実に東映らしくないが「面白い」。ひそかに続編が出ないか期待している。