「角度の問題じゃない!」ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃


ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃 【60周年記念版】 [Blu-ray]

監督も出演者もストーリーも含めあらゆる意味で意欲作。

現在見直すと本作の特徴は2つある。

建造物のリアルな破壊とそれに巻き込まれる人々。

先の大震災を経験してみると、これがシャレにならないぐらい怖い。建物がバンバン壊れて、人がそれにめちゃめちゃ巻き込まれている。もちろんグロテクスな描写はないが明らかに大勢の人が犠牲になっているとわかる描写が多い。

そして人間側の対ゴジラ組織が「軍」というところ(過去には「Gフォース」というものがあったが……)。

映画製作者側として見れば実在する自衛隊が映画に協力してくれれば(ストーリーに制限が出るが)映像にリアリティが出るし、制作費の節約にもなり(軍装備というのは特殊で金がかかるし、人員も一人二人ではその体をなさないので10人20人と必要)一石二鳥だ。だが本作はあえてそれを捨て「防衛省と防衛軍」という組織を出してきた。

今の日本に「軍」が復活する可能性は極めて低い。そのため登場する防衛空軍、防衛陸軍の内容にどうしても「薄さ」を感じてしまう。特に本作の主力となる「防衛海軍」の個人装備が旧軍よりなのがちょっと…… あと活躍する駆逐艦が2隻しかないのも予算の関係であるとかないとか……

ただそれだけ「自衛隊」にしがらみがなくなったといえるわけで、その影響を真っ先に受けたのが戦闘機パイロットとその機体である。

空自がロシアと協力して戦闘機を作ったらもしかしてこんなものができるんじゃないだろうか? という機体が出てくるのだが、攻撃の角度が浅すぎるとの防衛軍中将の注文に「角度の問題じゃない!」とパイロットがぼやいてる間に、光線で瞬殺。

本作はここからが見どころで、爆散した機体が住宅地に雨あられと降り注ぎ一番手前の住宅にも破片が直撃、住宅大爆発。

監督鬱屈がたまってたんだろうかと感じさせるカットである。事情が分かっている人たちにはニヤリとしてはいけないがニヤリとしてしまうシーンだ。

見直してみると「金も人手もかけてるな」と感じる)映画である。特に防衛陸軍兵士が大量に出てくるシーンでそれを感じる、よくあれだけの個人装備を準備できたなぁ…… それにしても戦闘機がロシア系なのに防衛陸軍兵個人装備がアメリカ系なのは(小銃がM‐16だったりヘルメットがフリッツだったり)なぜだろうか?

また何回も見直せば本作に登場する架空の衛星テレビ局「デジタルQ」の企画部長の噛むスルメのごとく味わいが出てくるのかもしれない。