「Wi-Fi calling(Wi-Fi通話)」の凄さを伝えたい
T-MobileによるWi-Fi callingの凄さを伝えたいのだが、伝わらないのがもどかしい。
凄い凄いと口だけで言ってみても埒が明かないので、その技術とか歴史とか調べてみようかと思ったのだがこれがなかなか難しい。
いろいろと雑然としたことを書いてしまうが、お許し願いたい。
なぜ難しいのか。それは「Wi-Fi calling」の技術的立ち位置が不明であることが理由としてあげられる。
そもそもの出発点はUMA(Unlicensed Mobile Access)である。
このUMAというものが、どこの組織が作り出したどんな技術なのかというのはよくわからない。ただしそのあとのことならわかってきた。
と思ったら、このようなページを見つけた。
こちらの記事によれば「GSMなどの携帯電話網に他の無線技術を使ってアクセス出来る技術」とまとめられている。他の無線技術というのは主に免許のいらない無線LANやBluetoothをさす。
「3GのプロトコルのままWi-Fiに通話を引き継がせる」ことを目指している。
実例として……
「BT Fusion」が挙げられている。
英BTグループのGSMネットワーク内の設備に、UNC(UMA Network Controller)を設置。UNCはGSM内の交換機MSC(Mobile Switching Center)からは無線基地局に見える。
との記載がある。少なくとも物理的な機器としてUNCなるものが存在したらしいことはうかがえる。
ただ、BT Fusionはどうも携帯電話だけではなくて固定電話も使っていたようなので、現在のWi-Ficallingとは少し様子が違う。そして自宅に備え付けられるものがWi-Fiではなく「基地局」とあるので、ホットスポット的なもう少し規模の大きな機器があったのかもしれない。
とはいえその接続の技術としてはUMAが用いられたので概念としてWi-Ficallingの始祖であるといえる。
よくよく読んでみたらWikipediaのGANのページに歴史的な経緯が乗っていた。
Generic Access Network - Wikipedia
曰く……
2000年代初頭、いくつかの携帯端末製造会社と通信事業者のグループが、高速化しつつあるインターネット回線に目を付け、これと携帯電話の通信を結び付けられないかと考え始めた。それによって生み出された技術がUMAである。2004年にその最初の規格が決定した。
しかし、これだと一部の企業しか用いないことになってしまうのでもっと広範な規格として発展させるべく、3GPPのプロジェクトに含まれるよう働きかけた。
2005年4月8日。3GPPは「release6」にてUMAの規格を承認。なおここから名前がGANと変更された。ただし、その呼び名は強制されるべきものでもないため、最初の名前であるUMAも依然として使われている。
ここが2004年に出した規格に「GAN(Generic Access Network)」があるのだが、それについては前述の記事にこうある。
これ以上でもこれ以下でもない、でもわかりやすい記述である。
ここからわかるように「Wi-Fi calling」と部分から見れば、その概念はUMGもGANも変わらない。
ある端末を使っている人物がいたとする。この人が家の外にいて移動しているときは、携帯電話事業者の立てたアンテナによって通話をしている。だが家の中に入りWi-Fiの圏内に入ったならば、通話は切れることなくその通信はWi-Fiに引き継がれる。その逆も可能である。シームレスであるということが最も重要なポイントだろう。
Wi-Fiを利用しているわけだから、その考え方として「国内通話」「国際電話」という区切りはつかないが、通信事業者はそれについて料金体系をどうするかは自由に決められる。また、料金プランによって利用できるかできないかも決められる。
複雑な事例としては「アメリカの携帯電話を日本に持ち込んで、アメリカに住むアメリカ携帯電話に電話をかける」などがあげられる。
日本に居てもWi-Fiを使えば、通信の流れとしては「携帯電話回線を使っての国際通話をしているわけではない」から「国内通話」といえる。しかし実際は「日本からアメリカ」にかけているのだから「国際電話」ともなろう。
AT&TはポストペイドではWi-Ficallingは使えるが、プリペイドでは使えない。
それはともかく、これの利点は通信事業者のアンテナがカバーする範囲が狭くても、Wi-Fiさえあれば通話が可能になることである。単純に物事を見ればアンテナの範囲が広がったようなものだ。
さらに通信データの問題から言っても、携帯電話の通話を全て基地局だけで処理するのではなく、Wi-Fiとそれによってつながっているインターネット回線にリソースを振り分けることにもなり、その意味でも通信事業者の負担が減ることになる。
加えて自宅のWi-Fiの電波のほうが強力で安定しており、音質の意味でもより良いものを期待することができる。
インターネット回線を用いるという点でIP電話と似ているが、あくまでも携帯電話の通信規格によるものなので技術的には全く違うものである。
このようにいいことづくめのものであるが、一体その技術はどんなものかと言われれば説明が難しい。
概念は前述した通り明らかなのであるが、技術についての記述がほとんどないのだ。
なにせ現在GANについて、日本語Wikipediaにはその記事が無い。なぜないのかと言えば日本の携帯事業者がWi-Ficallingの技術を導入していないことによるものが大きいだろう。
使われていないものには誰も関心を払わない。
よって誰も解説を試みないわけだ。
あと3Gの技術とWi-Fiの融合であるから、そのどちらかの解説だけでは説明しきれない。つまり3Gの説明からもWi-Fiの説明からも抜け落ちる可能性があるということである。というか実際そうなってしまっている。