尿石除去成功「サンポール様への詫び状」
拝啓、サンポール様。
わたしはあなたに謝らなければなりません。というのもこれまであなたのことを避けていたのです。
まずは、わたしとあなたの出会いについてお伝えしたいと思いましたが、それは難しいと思いました。なぜならわたしの物心のついた頃からすでにあなたは存在していたからです。
ホームセンターで、ショッピングモールで、ドラッグストアであなたを見かけないときはありませんでした。
若いときはどうしても外面にだけ目にいきがちでございます。わたくしもご多分に漏れずそうでございました。トイレ用洗剤では白色のケースにシュッとした抜けた感のあるノズル、そういうものを好んでおりました。
今まではそれでもよかったのです。しかし離婚して一人住まいを始めてからあるものに気づきました。
尿石です。
トイレの一部ではありますが、それはいました。白色のケースの洗剤を使いましたが、どうしても取れません。
ヤスリでもかけて削るか……
あいつの頑固っぷりに、そんなぶっ騒なことも考えてしまいました。賃貸なのに。
そんなときにあなたことを知りました。今まではあえて避けてきたあなた。そうサンポール。
ホームセンターに向かい、初めてあなたを探しました。
そうしたらあなたはどっしりとした面持ちでそこにいました。
あなたを使わなければ尿石は取れない。そう頭ではわかっていましたが今までのわだかまりがあり手を出すのをためらってしまいました。
しかし500mlの溶剤を見つけ即決しました。この少ない量なら失敗しても後悔することはあるまい、その後にあなたの最終印象を決めればよい。そんな風に、ちょっと「舐めた」感じで購入いたしました。
家に帰り、早速トイレに向かいおもむろに、しかしあなたの刺激を避けるためニトリルゴム手袋と保護メガネをかけて、憎いアイツにぶつけてやりました。
ネットの情報では「小一時間ほど待つ」とのことでしたので、そのままにしてネットサーフィンなどをしておりました。
そのあとトイレを見てみると、なんとまたあいつはまだいるではありませんか!!
騙された!! 最初はそんなふうに感じました。
しかし、そのままにしてはおけません。あなたは危険な液体なのです。トイレットペーパーで拭こうとしました。
そしたらどうしたことでしょう、拭いたあとが綺麗になっているのです。アイツで曇っていたトイレがピカピカになりました。
わたくしは深く反省いたしました。やはり何事も外見だけに目をやるのは良くない。そのような真理にようやく到達したのであります。
綺麗になったトイレを前に、わたしは己の不覚を改めて恥じました。
そうすると同時に、あなたの姿がなんとなく爽やかに見えるようになりました。調子のいいやつだとお思いでしょうね。
でもこれが今の正直な気持ちなのです。
これからも、あなたのお世話になろうと思います。どうぞよろしく。