売り手買い手ともに導入が簡単なシステムqrコード決済、「pixiv PAY」の取組み。

https://pay.pixiv.net/より引用。

わたしは常々我が国ではなぜ「qrコード決済」が発展しないのか、不思議に思っていた。もちろんこれには現金主義が大きな影響を及ぼしているはずだ。

だが若い人たちにはキャッシュレスな下地ができつつある。そしてキャッシュレスに大切な主役は「買い手」だけでなく、「売り手」も含まれる。何せ売り手側にその受け入れ態勢が整っていなければ、いくら買い手が電子マネーや非接触決済あるいはクレジットカードで払いたいと思っても無理だからだ。

そこで使うことが検討されやすいのはqrコード決済だ。その機能が備わったアプリを使えば、売り手も買い手もスマートフォン一つ(二つ?)で決済が終了する。もちろんキャッシュレスでだ。このような仕組みに飛びつくのはやはり若い人たちだろう。

そのqr決済アプリの一つとして割と華々しく出てきたのが「pixiv PAY」である。

では実際の使い心地はどうなのだろうか? その試金石ともなりうるイベントが開催された。「pixiv PAY」決済限定即売会、その名も「pixiv MARKET」ある。

売買決済システムの条件はもちろんこうなる。

支払い方法は、同社が提供する対面決済アプリ「pixiv PAY」(iOSAndroid、ダウンロード無料)のみ。売り手(出展者)も買い手(購入者)もこのアプリを利用する。事前にpixivアカウントとクレジットカードを登録しておく。

記者が出展者に使用感を聞いてみたところ「小銭を持ち歩かなくていいので楽」「お釣りの計算をしなくて済むのでありがたい」といった声が上がった。

ある出展者は「キャッシュレス決済に慣れている外国の人だと、金額の間違いがないので(現金よりも)安心すると思う」と話す。また「今まではお釣りの計算が面倒で、原価を考えると1800円を付けたいものでも、1500円にして売ることがあった。pixiv PAYが主流になれば(原価割れなどで)苦しむこともなくなるのでは」とも話してくれた。

この「おつりが面倒なのでわざと低い売値を設定しなければならない」というのは初めて聞いたのだが、小規模な個人販売だとそうなってしまうのだろう。しかし「Pixiv Pay」を使えば、みすみす儲けの機会をつぶすことがなくなるというのは興味深い良い影響だ。

では企画したPixiv側の意図はどのようなものなのだろうか。

ピクシブの重松裕三氏(クリエイター事業部 部長)は「(pixiv PAYのような)アプリを広めるには、多くの人が同時に使っている状況を意図的に作らなければならないと思った」と話す。

これは、Kyashにも言えるのではないだろうか。リアルカードができたのは良いが、正直その流れを見ると2%のキャッシュバックに引かれた(それは悪いことではないが)のと物珍しさにひかれただけという印象を受ける。

これは気のせいではない。Kyash関連のツイートを調べてみたのだが、最初にリアルカードが到着したのと2%のキャッシュバックに言及するだけで、ほとんどの人がその後、使用している話が出てこないのだ。もちろん生活の中で頻繁に使うようになったので、わざわざ触れる必要もないのかもしれない。

しかしtweetといえばつぶやきである。何かあったらつぶやきたいと思うもの。それがない。

ピクシブがpixiv PAYを開発したのは2017年8月だが、今回のイベントでは来場者の多くが初めてpixiv PAYを利用したという。重松氏は「例えば『コミケでpixiv PAYを使ってください』とお願いしても、導入のハードルがある。現金を使いたい人もいるので、なかなか普及するのは難しい。まずは小さなイベントで、全員が使っているという状況を作りたかった」と話す。

Kyashもこれからさらに積極的に策に打って出ないと、カードをばらまいただけ、そしてキャッシュバックが終わったらカードの使用も終了。ということになりかねない。

つまり「Kyashを使わなければならない」という状況を作り出し、これを使うことが便利で、しかもお得であると広く認識させること。そして「強制的にKyash利用するような機会を定期的に提供すること。それが求められている。

そして「お祭り感」がないのもまずい。というのもそれがないファンが生まれず「使い続けたい」と思う人たちが増えないのだ。

会場には、クレジットカードを登録していない人でも、その場で現金をチャージして支払いに使える「ポイントチャージ(入金)」スペースも。ピクシブによれば、チャージ派とクレジットカード派は半々くらいだったそうだ。

支払いに使えるのがスマホアプリのみということで、会場内には充電エリアも設けられた。

残念ながら、今のKyashにはそこまでやらなくても…… という雰囲気が感じられる。もちろん絶賛規模拡大中のため人手やリソースが足りないというのもあるだろうが…… 

https://www.paymentnavi.com/paymentnews/74993.html
JCBQR・バーコード決済サービスの統一規格の策定に着手した理由とは?

さて、このqrコード決済のシステムであるが、今のところ各社規格がばらばらであって共通のものはない。

上記の記事からすると、JCBによるqrコード決済規格の策定はまだ準備であり、未知数なものだ。しかし日本ではあまりなじみのないqrコード決済がこれにより前進することは確実だろう。

JCBが音頭を取ってくれるのであれば、それに乗ろうとする事業者も増えるだろう。なにせ従来のPOS(レジ)の導入には相当のお金がかかる。しかしこのqrコード決済であればスマートフォンで事足りるのだ。その費用効果は絶大だし、個人事業主や、町のお稽古事の先生もそれを使いたいと思うかもしれない。

Kyashもそれに参加しこの機能を持たせられないだろうか? そうすればいわば売り手の使用も増える。

利用者が増えるのは、話題があるうちである。そしてそれはいまである。