PayPal、OsushiそしてKyash

投げ銭とは少し硬めの言葉で言えば「個人間送金」ということになる。ただこれではニュアンス的には正確ではないだろう。匿名で、そして本人確認を要することがない送金という言葉が適切だろう。実際、ストリートミュージシャンにお金を渡すのに「わたしの身元はこれです、そしてあなたの身元を明らかにするものを見せてください」などと言わなくても、それが完結してしまう。

ではこれを仕事として仲介しようとするとどうなるか。これは「資金移動業」と呼ばれるものだ。

「Osushi」騒動にみる個人間送金・割り勘サービスの法律

こちらの記事を読むと、「資金移動業」の資格を得るためのハードルが非常に高いことがわかる。少なくても、素人が思い立って「これで起業しよう」などというのは不可能だといえる。ここでユーザーに求められる大切なことがある。それは「本人確認」という作業だ。これを覚えておいていただきたい。

これらに関することでわたしが印象に残っている出来事がある。

1つ目はペイパル個人間送金事業断念事案。

PayPalが国内の個人間送金を一時停止、「資金決済法」施行に伴い

それについてはこの記事が詳しい。結論から言うと「資金決済法」施行にともない、「資金移動業者」として認められるまでその取引を停止するというものだ(現在ではその資格を得てPayPal.Meとしてサービスを行っており送金は可能になっている)。

これ以降、個人間の現金のやり取りを仲介するためには本人確認が必須になった。こうなると「気軽にどこかのだれかに匿名でお金を渡す」ということができなくなってしまった。

余談であるが、技術が進歩するにしたがって、データを正確に、しかも速やかに、かつそれらを小型端末でやり取りすることが可能になった。こうなるとどうなるか? スマートフォンが「これから発展することが見込まれる国」において多くの人の手に渡るにつれて、それをつかって積極的に個人間送金がなされるようになった。国や地方の組織は信用ならない。そして銀行に口座などを持っていない。これまでは遠隔地には(例えば出稼ぎなど)郵便で現金を送るしかできなかったが、スマートフォンでURLを介して、あるいはqrコードを介して簡単に送金できるようになった。

これも余談であるが、自国通貨の価値がどんどん下がっているベネズエラでは街の買い物などで決済アプリを使うことが流行っているのだそうだ。おそらくドルを使っているのだろうが、それらを手持ちで使うのではなくスマートフォンそしてアプリだけで完結して使うのである。お金はアプリにチャージする。そうすれば現金を持ち歩かなくてもよいし、わざわざ銀行口座を持たなくてもよい。受け取るお店の人も強盗に入られる心配もないし安心である。

 さて本題に戻る。次の出来事は最初にも出てきたOsushi事案である。

投げ銭サービス「Osushi」大炎上の理由

こちらの記事に詳しいが、最初に技術的な問題が指摘され、続いて法的な事柄が問題となった。つまり匿名でだれにでもお金を寄付するというシステムが「資金決済法」に触れるのではないかという点である。

お寿司を送れるということになっているが、実際に送れるのは「お金」である。

投げ銭サービス「Osushi」が再始動 お寿司の“現金化”は不可能に

結局、そこらへんが本当に問題になったのかどうかは不明であるが、上記の記事によると「現金化」は不可になったようである。

ちなみにわたしが勝手にライバル視しているLINE Payは「資金移動業者」として運用しているため、現金をやり取りするのに問題はない。また現金の出金も可能である。なので本人確認(ここでは銀行口座の紐づけ)が必要である。

なんでそこまで本人確認にこだわるというと、マネーロンダリングに使われる恐れがあるからである。おっかないお兄さんが身分を隠して、アプリを使って不特定多数の人間からお金を巻き上げて、それをじゃんじゃん引き出して豪遊なんてことになったら大変である。

そこで彗星ごとく現れたKyashである。ようやくここまで来れた。

Kyashは個人間送金アプリとなっているが、これまで書いてきた事情のため仕組みとしてはチャージ→「(国際ブランドプリペイドカード)Visaのポイントに変更」→そのポイントを受け取る→そのポイントをVisaポイントとして加盟店やネットショップなどで利用できる。という位置づけで何とか「現金(かなぁ?)送金」を可能にしたのである。

一度Visaポイントに変更したものは現金化ができない(この制限を課している法規がわからなかった)。

だが、その犠牲の上に得られた貴重なものがある。それは「匿名での個人間送金(相当額)」と「本人確認が無用」であるということ。逆に考えると送り先の本人確認もいらないということである。これを大切にしたい。なんと気軽に投げ銭をすることができるシステムではないか。

めんどくさいアプリはだれも使わない。仮にわたしが誰かにお金を渡したいと思って「Kyashアプリをインストールしてもらえませんか?」とお願いしたとしよう。必要なのは携帯電話の認証とアプリでの名前の設定だけ。お願いした相手の「本人確認」もいらない。レシートを印刷したり、銀行口座を入力することなど必要ない。

ぜひその特徴を生かして、好きな絵描きさんや小説家さん、ブロガー(古い)や、共感できるつぶやきをするTwitter上のあの人にKyashを使って惜しみなく投げ銭をしていただきたい。

ちなみに、上記の仕組みを法的な言葉で示すと「前払式支払手段」となる。いわゆるチャージ式(前払い)プリペイドカードのことである。この前払式支払手段についても資金決済法で規制されており、前払い式にすれば何でもやり放題とはならない。

LINEゲームのアイテムに資金決済法適用!?資金決済法の「前払式支払手段」とは

ともかく、わたし自身がキャッシュレス人間なので、何の問題もない。例えばKyashに間違って1万円チャージしても、それを国際ブランドプリペイドカードとして使用するのでむしろ好都合なのである。

早く使いたいので、リアルカードの発行を早くしてください。

Kyash投げ銭する↓。